–著書(小さくて強い会社の作り方の「はじめに」の初回原稿を掲載しています)–
僕は独立起業の登竜門として小資金で独立したい個人を中心にコンサルティングを行っています。少人数のマンツーマン形式のため、その手法自体を手広くインターネット上で公開する事はこれまでありませんでした。しかし、個と個が繋がりを持って利益を享受する時代になった今、私がコンサル会員に伝えてきた「小さくても強いビジネスモデル」を作り上げる方法を公開する事で、より市場は拡大して活性化されていくと考えました。
遡ること十数年前、23歳の私は全財産3万円を握りしめてビジネスの世界に飛び込みました。自由に自己表現が出来るインターネットは可能性に溢れていて、白紙のキャンパスに好きな絵を描けるという魅力に引き込まれていったのです。ですが、初年度の年収は6万円という鮮烈なデビューとなり、一筋縄ではいかない難しさに直面したのです。
インターネットを活用する事で、資金を最小限にして始める事が出来るだけではなく、作業を効率化させていく面でも非常に便利ですが、機械的な作業が続くと、自分自身もいつの間にか機械化して無機質になってしまう傾向があります。商品やサービスを利用してくれるのはパソコンではなく人だという当たり前の事が、起業当初の僕は作業に没頭するあまりに見えなくなっていました。インターネットはあくまでも数ある手段の1つとして考える事で、ネットに浸食されたロボットのような感覚から抜け出しました。
ビジネスモデルを構築していく上で、なぜ様々な仕組みを用意するかと言えば、楽になるためと考えがちですが、お客さんにとっての利便性や満足度が損なわれるようなら間違いです。理想のビジネス像を考えた時、自分はこうなりたいという何かしらの思いが浮かんでくると思います。理想像はビジネスを組み立てる上で大切ですが、お客さんの願望ではありません。全てのビジネスはサービス業と考え、お客さんありきで、理想を組み立てていく事を僕は意識しました。
初年度の苦い経験の後、基盤となるビジネスモデルを構築し、自分のビジネスに様々な形で人を介在させて流通網を形成していきました。ノウハウやテクニックと呼ばれるものは基盤があって初めて活用できる+αの要素に過ぎません。その後、資金3万円スタートで始めたビジネスは、広告費0円で1億円の売上を出した事から急速に展開していきます。
その経験を皮切りに、60以上のサービスを実質1人で回せる仕組みを取り入れて、私自身はコンサルティングと、複数社のマーケティングの2つをメインに活動するようになりました。11年間を数行でまとめてしまいましたが、これらの方法はコンサル生でも実証済みです。今回お伝えしていく内容は、時代の恩恵とか、私だから出来たという過去の栄光集ではありません。
僕はどんな遊びよりもマーケティングが好きで、日々検証を重ねて、人知れず発見しては感動し、それを仲間と共有するという趣味があります。ゲームをいち早く攻略して、学校で友人に教えるのと似た感覚かもしれません。そのため、今回も販促テクニック集を書きたいという気持ちもありました。しかし、今の世の中を見ている限り、確実に大勢の方のニーズを獲得出来る販促テクニック本よりも、自分が心底気付いてほしいというものを世の中に出していく事の方が、やりがいを感じたのも事実です。
ビジネスモデルをデザインする事は、資金、人脈、スキル、経験という4つの要素の土台となります。資金は潤沢にあるに越した事はありませんが、取り組むビジネスが固まっていなければ資金の投下先を間違えます。人脈は手あたり次第に増やしていっても意味はありませんし、スキルに関してもビジネスが固まれば必要なものが明確になります。そこで初めて経験を重ねていく事の効果が出てくるのです。
現在(2015年)は自社を含めて8社の役員を務める一方で、週の半分は家族と1日中過ごす時間にあてています。生きがいにも等しいビジネスは、独立した元コンサル会員をはじめ、個々で独立したメンバーを集めて、事務所を構えました。社員は雇わずとも、事務所のメンバー間で企画を立ち上げて結果を残し続けています。これも私が起業当初に思い描いた夢だったのですが、上下関係はなく仲間とワイワイ出来る場で、文化祭や体育祭のようにビジネスを共有したいという気持ちから実現しました。
こうして1つ1つの夢や理想をかなえていくためには、ビジネスというフィールドを選んだ以上、利益を上げなければ継続は出来ません。そうした背景から「結果が全て」と言われる事も多いビジネス世界ですが、過程に充実感がある人ほど結果を出している事実があります。
にわとりが先か卵が先かという事になってしまいますが、ビジネスに着手している以上は、大半が過程(準備)に時間を費やします。そこを誰よりも楽しむ事が出来れば、ビジネスを継続させるための根幹部分はクリアされたも同然です。辛い苦しいという環境下では、心根の部分で継続していこうという気持ちも芽生えません。
あと100回、桜の季節を迎える事は出来ませんし、大切な人と100年一緒に過ごす事も現実的には難しい話です。と、センチメンタルな気持ちになってほしいわけではなくて、結果に固執し過ぎると、最も貴重な時間は瞬く間に過ぎ去って、人を意識していないばっかりに、後に残るものはお金だけという事にもなりかねません。何のためにやるのかも、しっかりとイメージ出来ると「学ぶ事が目的」という本末転倒な事態からも解消されていきます。
では、継続していくために大事なものは何かと言えば、どんなビジネスであれば儲かるかという発想ではなく、新規獲得からサービス提供、リピートの流れを作るのはもちろんのこと、自由な時間を確保するために継承、手離れまでをデザインして取り組む事です。
インターネットで構築するビジネスは、今すぐ、誰でも、簡単に、楽して稼げるというイメージばかりが先行していて、意識の低レベル化は深刻な状況とも言えます。机上の空論に過ぎないビジネス手法を販売する方が問題ですが、甘い誘惑に期待して買ってしまう知識格差も大きな問題です。
そこで、実際に10年以上続けてきた僕が、5000名以上のクライアントと対峙してきた経験と、少数精鋭の顧問コンサル会員に伝えてきた事を含めて、0から出来るビジネスモデルについて初めてまとめました。コンサル生の7割はビジネス未経験者ですが、実績と経営者の輩出率で言えば過半数を超えています。が、これにはゴールがなくて、私自身も常にコンサル生に、教えるスキルを育ててもらっていると感じます。日々学びの中にいますが、本書の中身はご期待ください。具だくさんで大盛りにしておきました!
100人いれば100通りの展開方法が存在します。1人1人環境も違えば、スキルや経験も異なり、理解力もバラバラです。本来は一対一で向き合ってこそ最適なご提案が出来るのですが、その中でもコンサル生に共通して伝えて来た基本項目、つまり「0から1」の部分に絞りました。「1から100」を教えてくれる本や情報はたくさんありますから、ここは役割分担という事で、何よりも大切な起点となる「0」の部分を責任もってお伝えしていきます。この0から1を構築する事で、僕やコンサル生と同じく、他者を圧倒出来るポテンシャルが出来上がります。また、これまで学んできたノウハウやテクニックも活かせるようになります。
本書を通じて、新たな出会いが生まれたら私としては最高に嬉しいですし、そのためには、本気で書かなければあなたと良好な関係は築けません。文章を書くのが得意ではない僕なりに、一言一句、心を込めてお届けします。
株式会社アイマーチャント代表取締役
菅 智晃