起業するための準備をしているという方の中には、理念、大義名分といった事柄を固めている最中という話をする人も結構多いです。どれも大切な要素ですが、初めからこのあたりが立派で崇高である必要はありません。ただ一つだけ、今抱いている思いに蓋をせずに忠実になる事。すべてのパーツは、実践で経験を積みながら浮かび上がっていきます。独立して十数年、今の視点から見れば自分自身の「核(コア)」は物凄く重要。ですが、初動から見出せるものではないというのが僕の答えです。

後々、最初の段階でここをしっかり固めておけば…と思うことがあるかしれませんが、経験を重ねたからこそ見てくる重要素であって、初動で作り込むには見えていない部分が多すぎます。結果として現状のステージごとに見出されいく事を僕自身が体感しました。

僕らは心の声にしか従う事ができないし、取り繕うだけ無駄であるという事です。逆に思いを乗せた言葉には重みがあり、思いを乗せたサービスや商品は一定数のお客さんに必ず響きます。これが綺麗事ではないからこそ、今回のお題に取り上げました。

考えて作り上げた理念より、今ある想いに忠実になる事

何のためにあなたはビジネスをするのか?ここをテーマに取り上げている書籍も数多くあり、最初に具体的に固めていく事を推奨している人たちが多いのも事実です。が、初動はそれよりも現状抱いている思いで十分です。

使命を持って行動する事で、目の前の事に打ち込みやすくなり、同時に周囲から支持を得られるようにもなりますが、小難しく考えてしまって、ここでストップする事の方が勿体無いんです。人に喜んでもらう事が楽しいと感じたり、良くも悪くも結果が100%自分に返ってくる事へのシンプルさ、そして、0から勝負できるワクワク感のようなものがあれば十分です。

ホームページやブログ、SNSのプロフィールでしっかり書かないと思う方もいるかもしれません。でも、就職の面接かのような綺麗すぎるコンセプトを書くのは自己満足で、端から見れば薄っぺらさを逆に露呈しているようなものです。それよりも、まずはどんな商品であれサービスであれ、ビジネスで人の役に立つ事を経験する事の方が先決です。0から作り上げる肯定とお客さんからの声をもらうことで、必ず芽生えてくるものがあります。

何のためにビジネスをするのかという大義や理念のようなものは、実践を積み重ねていく過程で必ず浮かび上がり、ステージに合わせて発展していきます。いかにも形式上で作り上げた大義名分や理念は、誰からの共感を集めることもありませんし、体裁を整えるためのコンセプトは一切必要ありません。

僕自身の心の遷移を次にまとめましたのでご覧ください。

心根の遷移に素直に従う事が理念、大義のスケールを広げる

コアの発掘は自身の強み(自社の強み)となるため、いずれ向き合う時がきます。ですが、経験を積んでいかなければ、コアの発掘の重要性にはなかなか気づく事が出来ないだけではなく、深堀しすぎる事で行動抑止となっているケースが非常に多いのです。

コアやコンセプトを先に固めるという指導は決して間違っているわけではありませんが、指導している大半の人たちも、起業当初はがむしゃらに突っ走ってきたはずで、過程の中で重要性に気づいた視点と考えて間違いありません。以下に僕自身の心根の遷移を時系列でまとめてみました。

2003年:大学の仲間とこのままずっと遊んでいたい(満員電車嫌だ)
2005年:世の中に爪痕を残したい。死んだ後に残せるものがほしい。
2006年:就職と起業が同列の選択肢になる時代。1,000人の起業家輩出。
2008年:お世話になった市場の健全化で個人ネットビジネスの市民権を得る。
2010年:個人ビジネス市場の在り方の変革。同志と共に引っくり返す。
2014年:輝く個人経営者の輩出。太陽となるリーダーの創出。

2003年、最初の動機は、完全な自分都合によるものでした。インターネットが普及して、単純に商圏が広がるといった可能性や0から挑戦していく事へのワクワク感もありましたが、大学の親友5人と、このままずっとワイワイとできる環境を維持できたら最高だなとか、朝の通勤ラッシュでイライラしている社会人を見たり、終電の疲れ切った様子を学生のうちから見ていて、先入観によるサラリーマンへの抵抗が独立意欲を掻き立てました。

また、2005年時には自分が生きてきた爪痕を残せるようなビジネスをしていきたいという思いが強くなりましたが、これも他者を顧みない自分都合のみの思いです。自分都合の夢や目標は、お客さんとは直接関係がありません。2003年〜2005年の間で、年商3000万くらいのビジネス規模にはなりましたが、第三者から応援される空気が出てきたのは2006年からです。

2006年からは、思いや目標が内側ではなく外側に向き始めました。これは意識して変化させたわけではなくて、自分自身が独立をして人生が変わった事を実感して、僕と同じような境遇の人をどんどん導いていきたいと心が遷移していきました。内側の夢を自分都合と仮定した場合、外側の夢は「お客さん、仲間(同期、先輩、後輩)、先生、サイトに訪れるユーザー」等、すべての方々を巻き込んで叶えていく目標であるため、一心不乱で取組んでいるうちに多くの支持を得られるようになりました。

自分都合の内側の夢ではなく、外側の夢を多くの方々と共有していく事で、ビジネスは個人で出来る規模を凌駕して加速していきます。2003年当初では考えもしなかった事でした。独立起業支援に最大のやりがいを感じるようになったのはこの時で、以降はこの部分が土台となり、掲げるテーマが遷移していきました。

未だ就職で悩み、中には命を絶つ人も未だにいます。僕が1人1人と向き合って経営者を輩出していくのは時間がかかるけれど、就職と起業が同列の選択肢になる時代がきたら、少なくとも僕と同じ境遇の人は希望で溢れるはずだと。

その後も顧問コンサルティングやセミナー、教材や講座などを通じて、相当数の経営者を輩出してきました。自分以上に0→1の状態のクライアントを直接マンツーマンで導いてきた人は、そう多くはないだろうと思っています。

ただ、インターネットを介したビジネスはアンダーグラウンドの色合いを強く、金銭面での敷居が低いために詐欺も横行します。起業当初の思いから比べると、まさか自分が健全化という言葉を語る人間になるとは全く思っていませんでしたが、独立している経営者1人1人が、今以上に自分のビジネスに誇りを持てるような風土になったらという気持ちで、業界健全化を唱える社団法人の理事を務めました。使命というほど大それた言葉が当てはまるかはわかりませんが、気持ちがついてこなければ本気で力を入れてやる事はできません。

ビジネスモデルを構築する時には、目の前の事だけではなく全体像を俯瞰する視点が必要ですが、思いに関しては目の前の事に取り組んでいく事で経験と共に溢れ出てくるようになります。

2010年以降は、インターネットを活用したビジネスは認知を益々広げて、先駆者たちが敷いたレールも充実し、各々のライフスタイルを最優先にしても生計を立てることが出来る環境が整いました。ただ、一部ではありますが楽して儲けたい販売者と楽してお金を手にしたい子お客さんの不毛なマッチングが続いている現状があります。この流れを今は数少ない同士と一緒にひっくり返していこうという思いの元に、僕の目標は輝く個人の輩出が大きなテーマへと遷移していきました。

理念や大義は考えて突き詰めるものではなく内側から芽生えるもの

もし僕が、起業当初から「輝く個人の輩出を〜」と言っていたらどうでしょうか。ちょっと危ない意識高い系と思われたに違いありません。自分のステージに合わせて、正直な気持ちなの中で経験を積んでいけば、いずれ大義は見つかります。

学生の時に、将来やりたい事を聞かれても漠然としてしまう人が多いのと同じで、独立後も実体験を重ねていかないと見えてこないものです。ラーメンが好きだから独立したけれど、作る事ではなく食べる事が好きだったんだと気づく人もいます。映像制作やWEBデザインが好きで独立したけれど、請負ではなく自分が表現するものを作りたかったという人も少なくありません。

僕自身はWEBタレント情報誌、ライブイベント、グッズ販売などを最初に仕掛けていきましたが、WEBタレントそのものへの興味はありませんでした。でも、ビジネスが回ること自体に楽しさを覚えて、お客さんからのお礼のメッセージや、WEBタレントの方々からの温かい支援をもらって、ビジネスそのものの面白さに気づきました。

心に従う意外に本領を発揮出来ることは出来ません。まずは立派な大義がないのが当たり前という気持ちでビジネスの経験を積んでいってほしいと思います。